新設された「オペレーションリスク」と「アウトライヤー規制」

サブプライム問題で比率が低下する金融機関

利用者から預金という形でお金を預かり、企業の生産活動に必要な資金として融資を行う金融機関は、今日の経済の根本を支えており、その経営は高い健全性を保持することが求められます。

金融機関の経営が健全であるかどうかを示す代表的な指標が「自己資本比率基準」です。自己資本比率は、貸付金などの総資産と資本金などの自己資本割合を表しており、万一、経営危機が起こっても、それを乗り切るだけの自己資本があるかどうかの尺度になります。

1980年代にアメリカの銀行の倒産が相次いだことを受け、国際決済銀行(BIS)のバーゼル銀行監督委員会は、国際業務を行う銀行は8%以上、国内業務のみを行う銀行は4%以上の自己資本比率を保たなければならないとの規制を行いました。これをBIS規制といい、日本では1993年の3月期決算から適用となりました。

BIS規制は、自己資本を総資産で割ることで算出されます。自己資本比率を高めるためには、分子を大きくするか分母を小さくするかのどちからが必要となります。金融機関への公的資金の導入は分母を大きくし、企業向けの融資残高を圧縮すれば分母は小さくなります。不良債権処理で苦しんでいた金融機関によるいわゆる「貸し渋り」や「化し剥がし」が大きな問題になりましたが、その背景にはBIS規制をクリアしなければ、金融庁から早期是正措置が発動され、信頼が大きく低下しかねないという事情がありました。

近年、金融機関のシステム障害や事務処理ミス、不祥事などが相次いで起きており、それにより株価が低下し、信用度が低下するケースが増えてきたため、BIS規制は2007年3月期決算から「オペレーションリスク」を新たに加えて、新BIS規制としてスタートしました。新BIS規制では、リスクが高い資産(デリバティブや仕組み債など)の比率を20%以内に抑える「アウトライヤー規制」が新設されました。そのほか、数値目標だけでなく、自己資本の蓄積、融資管理、情報開示の徹底なども定められています。